ボードリヤールは『消費社会の神話と構造』の中で、GNPという数字で現すような国民経済の幻想性を指摘している。

 GNPは、財・サービスの生産の合計であるが、公害を生み出したり、人間に危険を及ぼしたりするような物の生産も全て含まれている。

 よく考えれば、現代の工業生産では、有用なものの生産の裏側には、有害なものの廃棄が必ず発生している。GNPはその有害なものの発生を隠蔽しながら、有用な生産のみを統計化し、生産活動の目標とする。

 この経済成長は、政治的テーマとなり、多くの権力の発生の基盤となる。この成長に対して、異議を唱える言説は隠蔽され、国民全体が、この成長によって幸福を得るような政治的幻想のストーリーに巻き込まれていく。

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つまり、成長の「神話」(ex.経済は成長しなければならない、その成長によって人々は必ず豊かになる)によって、現代の経済システム、政治システムは維持されているのである。

 この掲示板で扱われている物欲の問題に絡めて言えば、ボードリヤールは、消費社会における基本的欲求など、「神話」に過ぎないと喝破している。

 なぜなら、その欲求は権力によって操作され、何が基本的なのかさえ、既に明らかでないからである。 


阪本剛