日本では、学者はどちらかというと現実の闘争を忌避して大学に逃げ込んできた負け組がなるものと相場が決まっているが、欧米の学者はあからさまに現実の改変に挑戦し、一部の人間に都合の良い理論を次から次へと編み出してきた。

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これは、特に経済学の分野において顕著だが、アメリカの主流経済学者たちは、その学問とも呼べない意図的な統計編集を用いた経済理論によって、特定の政治思想の理論的・精神的支柱として重宝がられた。

2007年に亡くなったミルトン・フリードマンはその筆頭だ。スタグフレーション(インフレーション下における景気後退)の到来を予言し、市場万能主義者・マネタリストとして「どんな財政政策を採ろうとも長期的には無効である」との主張を証明( リンク )した論文でノーベル経済学賞を受賞した。

フリードマンは、公共投資による積極財政出動を主張するケインズ主義者を一掃し、'80年代のレーガン政権下において華々しく活躍したが、その理論はむしろ、非民主主義的独裁国家で忠実に実行されたと言える。市民を大虐殺したチリのピノチェト政権では強硬な自由経済改革が断行されたが、これはアメリカCIAを通じた軍事援助と同時に、フリードマンを始めとするシカゴ派学者(シカゴ大学経済学部)による理論支援に基づくものであった。

結局、この南北アメリカ大陸に吹き荒れた自由経済改革がもたらしたものは、超高金利・超ドル高政策による中南米途上国の債務不履行(デフォルト)と、対中南米諸国融資を行っていた米銀行の金融破綻であり、世界経済システムの崩壊につながりかねない危機だったのである。

※マネタリスト(monetarist)とは、貨幣供給量(マネーサプライ)は物価水準を変化させるだけで実物経済には影響を与えないとする現代版貨幣数量説を唱える経済学の一派およびその主張をする経済学者である。
【マネタリスト - Wikipedia リンク 】

近年、フリードマンらを始めとする市場原理主義者たちの経済理論とセットになった市場”改革”の手法を批判するカナダ人ジャーナリスト、ナオミ・クラインはこれを「ショック・ドクトリン」と呼んでいる。
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「 「ショックドクトリン 大惨事につけ込んで実施される過激な市場原理主義改革」 ナオミ・クライン新著を語る」
【2007.09.17-1 | DemocracyNow! Japan リンク 】

1973年のピノチェト将軍によるチリのクーデター、天安門事件、
ソ連崩壊、米国同時多発テロ事件、イラク戦争、アジアの津波
被害、ハリケーン・カトリーナ。暴力的な衝撃で世の中を変え
たこれらの事件に一すじの糸を通し、従来にない視点から過去
35年の歴史を語りなおすのが、カナダ人ジャーナリストのナオ
ミ・クラインの話題の新著The Shock Doctrine: The Rise of
Disaster Capitalism(『ショック・ドクトリン:惨事活用型資
本主義の勃興』)です。ケインズ主義に反対して徹底した自由
市場主義を主張したシカゴ学派の経済学者ミルトン・フリード
マンは、「真の変革は、危機状況によってのみ可能となる」と
述べました。
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クラインが著作で明らかにしているのは、自由主義経済は民主主義とともに発展する、という神話の欺瞞であり、驚くべきことに自由主義経済学者達自身が、自分たちの経済理論を実現するには大災害が不可欠である、と主張してきたという事実だ。クラインはこれを「惨事(disaster)活用型資本主義」だと批判する。

現実から乖離して毒にも薬にもならぬ論文を発表して遊んでいる学者達は、せいぜい無駄飯食らいの役立たずで済むが、フリードマンの経済理論は、確実に現実世界に住む普通の人々を蝕む害悪であり、真っ先に駆逐されるべき対象だ。彼らの思想(=惨事活用型資本主義)の行き着く先は、困っている人に高く売りつけよう→困っている人を作り出そうという、人間の所業として絶対に許されることのない思想だからである。

シカゴ派の悪行については↓が詳しい。もちろん、「悪魔」とは金融マフィアの手先の経済学者のことである。
【米国はなぜ「悪魔」が支配する国になってしまったのか? - 代替案 リンク 】




渡辺卓郎