菅直人首相、千葉景子法相、辻元清美議員の例を以って「左翼はすぐに転向する」235591という捉え方もできないことはありませんが、民主党が敗北し転向した本質的な理由は、否定の論理しか持たなかったことにあります。

'09年の衆院選で民主党は、脱自民(反特権)の潮流を追い風に、自民党批判・官僚批判と「政権交代」をスローガンにして圧勝し政権を獲得しましたが、政権を獲得するというのは何事かを実現する立場になるということであり、そこでは批判するだけでは済まされません。ところが、民主党には自民党批判・官僚批判といった否定の論理はあっても、「では社会をどのようにして変えてゆくのか?」という実現の論理はありませんでした。

例えば、事業仕分けをするのであれば、あるいは郵政民営化を差し戻すのであれば、「では、国家財政や郵貯350兆円を社会再生のためにどう使うのか」という答えが求められます。また、普天間基地を沖縄から移設するということは脱米路線に舵を切ることと同義ですが、であれば脱米後の外交や国防をどうするのかが課題となります。あるいは官僚批判をするのであれば、官僚支配に代わる社会統合の仕組みをどう構築するかが課題になります。

ところが、「民主党マニフェスト2009」リンクには、官僚批判⇒「政治家主導」「国民の生活第一」といったスローガンやバラマキ政策はあっても、「社会をどのように変えようとしているのか?」その実現イメージすら読み取れません。さらに、本気で社会を変えようとすれば、その実現基盤が発掘できるまで社会の構造を掘り下げ解明する必要がありますが、そのような実現ベクトルに貫かれた追求の形跡は見当たりません。

そして、否定の論理しか持たず、実現基盤はおろか実現イメージさえ持たない民主党がいざ政権を担うことになっても、これまで社会を統合(支配)してきた官僚組織を解体することなどできるはずがありません。逆に官僚たちに縋らざるを得ず、その言い成りになって政権交代から1年も経たずに転向者が続出するのは、当然の成り行きだったのです。

このように、否定の論理だけで実現の論理を持たなかったこと、それが民主党が敗北し転向した原因ですが、では、民主党が否定の論理しか持ち得なかったのは、何故なのか?

私権時代の全ての既成観念(古代宗教と近代思想)は、この異常な現実否定意識に基づいて作られている。その証拠に、これまで現実を否定する意識は、常に暗黙の内に正(義)として意識され、現実を否定する意識そのものを疑うような意識は、全く登場してこなかった。これは、現実否定→倒錯思考が、私権時代を貫く思考のパラダイムである事を示している。

>このパラダイムの内部では、それによって作られた観念群をどう組み変えても、又、どれだけ深く思考を巡らせても、決してパラダイムそのものを否定することは出来ない。だからこそ、これまで現実を否定する意識に対する懐疑(例えばデカルトの「我、思う」ことそれ自体に対する懐疑、例えば、思い続けている自分がおかしいのではないかという懐疑)は、針の先ほどさえ全く生じ得なかったのである。「現実否定の倒錯思考」20354

つまり、現実否定意識に基づく近代思想から脱却できない、従って否定の論理しか持ち得ないことが、民主党が敗北し転向した根本原因なのです(否定の論理とは敗北の論理であるとも言えるでしょう)。





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