現在の世界経済危機の中での日本の信用は高まり、一方で国内の物的市場は縮小していっており、円高とデフレの進行は中長期的に不可避な構造にある。この中で日本経済はどう舵を切るべきか?

以下、鈴木よしおホームページ「円高とデフレが日本経済の構造転換を促し将来の発展方向を示す」リンクより引用。
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【円高はバランスシート調整に悩む米国とEUのドル安・ユーロ安の反映】
 目下の日本経済の最大の問題は、円高とデフレであり、この二つを止めない限り日本経済は発展できないというのが、政府・マスコミのコンセンサスのようにみえる。
 しかし本当にそうであろうか。むしろ円高とデフレは、日本経済の構造転換を促し、将来の発展の方向を示す重要な現象ではないだろうか。
 このHPの<最新コメント>“日銀に求めるべきは円高対策ではなく株価対策だ”(H22.8.29)リンクで詳しく述べたように、米欧の不動産バブルの崩壊に伴う家計と金融機関のバランスシートの悪化により、米国とEUは現在バランスシートの調整過程にある。このため家計の消費と住宅投資の停滞、金融機関の信用収縮が起こっており、経済の先行き見通しの下方修正(米国)や二番底の懸念(EU)が生じている。日本にも1997~2003年にこの問題があったが、今は解消した。
 このような事情を反映して、経済の下振れリスクの強い米国のドルとEUのユーロが、日本の円に対して相対的に弱くなっている。これが目下の円高の基本的な原因である。
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【円高でも日本の価格競争力は過去15年の平均並み】
 この円高は、日本経済にとって致命的に不利な水準であろうか。
 日本銀行の試算によると、現在の円の実質実効為替レートは、07年中頃の円安のボトムに比べれば30%の円高水準であるが、99年末の円高のピークに比べれば20%の円安水準であり、過去15年間の平均水準にほぼ等しい(前掲の<最新コメント>のグラフリンク参照)。
 普段は対米ドルや対ユーロの「名目」為替レートをみているため気付かない人が多いが、日本の国内物価はデフレで下がっており、米欧の国内物価は持続的に上昇しているので、「名目」為替レートが横這いなら日本の国内企業の価格競争力は強まっていく。価格競争力が等しくなるのは、インフレ率・デフレ率の差を調整した「実質」為替レートが横這いの時だ。もっと正確に言えば、対米・対EUだけではなく、日本の全ての貿易相手国との「実質」為替レートを貿易ウェイトを用いて加重平均した「実質」「実効」為替レートが横這いの時だ。
 従って、現在の円の実質実効為替レートが過去15年間の平均に等しいということは、現在の日本の国内企業の対外的な価格競争力は、過去15年間の平均と同じだということである。

【円高による製造業の海外シフトは良いこと】
 しかし、平均的にはそうであっても、個々の製品や企業によっては、円高で価格競争力が失われているケースもあるだろう。
 円高に対する輸出企業の一般的な対策は、生産性の向上によるコスト削減、輸出価格の引き上げ、輸出契約・決済の円建化、原材料・部品の輸入額と製品の輸出額を同額にする、などであろう。
 これらの対策で対応しきれない場合には、対外直接投資による工場の海外シフトが実行される。円高は海外優良企業の買収や資本参加などM&Aを容易にすることも、これを支えている。
 このような工場の海外シフトを、ステレオタイプのマスコミは「日本産業の空洞化」と表現する。
 しかし、敢えて「空洞化」という言葉を使えば(実際は「グローバル化」であるが)、「空洞化」するのは製造業(日本経済の2割)であって、日本経済や日本産業ではない。製造業の雇用減少を埋める新しい雇用拡大が成長戦略産業で起こるので、日本の経済や産業に空洞化は生じない。

【円高を活用して国内の成長戦略産業を育てよう】
 これからの世界と日本の産業構造を展望すると、製造業のウェイトは新興国・途上国で高まり、非製造業(通信、エネルギー、物流<空港・港湾を含む>、法務、医療、教育、娯楽、メディア、広告、小売、卸売など)のウェイトは先進国で高まる。
 日本は円高を活用し、有利な対外直接投資を拡大して製造業を新興国・途上国にシフトさせるべきである。他方、新しい雇用を拡大する非製造業を発展させるため、上記カッコ内の業種を対象に、政府は規制緩和を進めて新規参入を促し、日本銀行はこれら成長戦略産業への低利融資制度を拡充すべきである。
 円高は、これらの成長戦略産業に対しても有利に働く。優れた技術を持った海外企業の買収や資本参加による提携、海外からの技術の買い入れや機器類の購入などのコストが低下するからである。
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つづく。

田中素