■政策がズサンなのではなく、予定通りの展開。
再生可能エネルギー(以下、再エネ)の固定価格買取制度(FIT)がスタートしたのは、2012年7月だが、現在、九電など電力会社5社が新規の買い取り手続きの中断を表明し、それと呼応するかのように経産省もまた、FITの抜本的見直しに動きだした。

経産省内では再エネの認定量に上限を設ける総量規制や、太陽光発電の買い取り価格を大幅に引き下げる案などが検討されているという。これらの案が採用されれば、再エネの普及に急ブレーキがかかることは間違いないし倒産する会社も出てくる。FITがスタートしてわずか2年の方向転換は、「太陽光発電バブル」「ズサンな制度設計」と評価されている。

しかし、経産省にとっては予定通りの展開なのだ。
FIT開始から2014年6月までに認定された再エネの設備の出力は7178万kW。今の原発1基の発電量が約100万kWだから、約2年間で実に原発72基分の再エネの発電計画が認定された計算だ。そのうち太陽光発電のシェアは約9割、6604万kWにもなる。これほど太陽光に偏重したのは、1kW当たりの買い取り額が40~42円と欧州に比べて2倍の高値に設定されて、どうやっても必ず儲(もう)かる仕組みになっていたためだ。
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例えば、九電管内では2014年5月末までに、なんと1782万kWの太陽光発電の申請が認可されている。九電の真夏のピーク電力は1600万kWであり、認可された太陽光1782万kWだけでこれを上回る。需要が少ない時期の昼間電力使用量約800万kWに比べたら2倍以上だ。誰がどう見ても多すぎるのは明らかだろう。

経産省は実態を分かっていながら認可し続けたのである。それには二つの理由がある。

■天下りの多い日本メーカーの保護
実は、割高な日本製太陽光パネルを採用したいという経産省の思惑が働いたからだ。本来なら、再エネ後進国の日本はこの分野で先進国のドイツの価格水準(日本の発電コストの半分)を目指すべきだった。

当時、パネルメーカーは経営危機を迎えていた。そこで経産省は買い取り価格をわざと高く設定し、OBも多数天下りしている日本メーカーを救済しようとしたのだ。

■本音は“原発ありき”
FITをスタートした当初は反原発の世論が非常に強かった。そんな時期に「太陽光を増やしすぎるのはやめろ」と言えば、反原発派から「原発を再稼働させたいからだ」と批判され、脱原発の流れを加速させる恐れがあった。経産省はそれがいやで、あえて沈黙を守り通したのだ。

太陽光が一部地域でピーク電力さえ上回る状況にまでなった現状ではFITの制度の見直しに、もはや誰も反対できない。今こそ、安心して再エネにブレーキをかけられる。

本来ならば、国はFIT施行と同時に発送電の分離を断行した上で、原発事故の全コストを原発コストとして上乗せし、原発への補助金支出もやめ、火力にはCO2削減のための炭素税をかけて、真の発電コストによってすべての種類の発電を競わせるべきだった。

だが、経産省はそれを意図的に再エネの買い取りが不可能となる状況をつくったのである。
明らかに国民をバカにした国家の暴走である。




向芳孝