ワセダクロニクルは、早稲田大学ジャーナリズム研究所(所長:花田達朗)のもとに作られた非営利の調査報道メディア。
その最初の記事を引き続き以下紹介します。 リンク

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バイエル薬品[注15]の抗凝固薬なら、記事の前年の2012年に発売が始まった「イグザレルト」しかない。

KK共同の金子幸平・執行役員総務部長はワセダクロニクルの取材に対し、「KK共同が電通PRから依頼を受け、社団共同に紹介したものです。その結果、記事として配信され、加盟社の紙面に掲載されました。こうした一連のPR活動に対する対価として、KK共同は電通PRから報酬をいただきました」[注16]として、電通グループからカネが支払われたことを認めている。

バイエルホールディング広報本部医療用医薬品部門広報の三好那豊子部長は「記事自体については何らの対価を支払っておりません。記事内容について何らの依頼をしておりません。電通グループから株式会社共同通信(KK共同)に対して何らかの対価が支払われたかどうかについては把握しておりません」[注17]と回答した。

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巧妙な誘導

記事は、「健康日本21推進フォーラム」という組織が実施した調査結果を紹介する形で書かれている。

まず注目してほしいのが、その調査期間「一昨年(2011年)1~9月」[注18]だ。

調査開始時点で販売されていた抗凝固薬は一つしかない。発売から50年が経つ先行薬「ワルファリン」だ。

したがって、「薬に対する不満が多く、年率で4.3%(3万3千人の患者に相当)が服用を中止」の対象になったのは、ワルファリンしかない。

では、山口理事長のコメント「最近は1日1回の服用で済む薬剤も登場し選択肢が増えている」で、出てくる新薬は何か。

記事が書かれた時点までに販売された心房細動の患者への抗凝固薬は次の3剤だ。
2011年3月[注19] プラザキサ
2012年4月[注20] イグザレルト
2013年2月[注21] エリキュース

キーワードは「1日1回の服用」だ。

エリキュースの使用説明文には「1日に2回(朝・晩)服用するお薬です」[注22]とある。プラザキサも同様[注23]。しかしイグザレルトは「1日1回」[注24]である。

つまり、山口理事長(80)が推奨している「新薬」はイグザレルトだけなのだ。このことは、薬の処方に関係する医師や薬剤師ならすぐわかる。製薬会社の名前も、薬の商品名も出さず、特定の医薬品へと誘導する巧妙な手法だった。

二つの共同は「表裏一体」
ではこの記事が載るまでの過程はどうだったのか。

ヒントは、先に紹介した電通側の内部資料に記載されている支払先の「(株)共同通信」にある。(株)がついているところがミソだ。

社団共同は一般社団法人だ。地方紙を加盟社とし、全国の地方紙に記事を配信している報道機関だ。これに対して、KK共同は株式会社で営業活動をする。社団共同の幹部がKK共同の役員を兼任しているのが特徴だ[注25]。

今回の問題の記事では、社団共同が記事を配信するとKK共同が電通グループからカネをもらっていた。

問題の記事の配信について、社団の河原仁志総務局長は「KK共同は社団共同の100%子会社だが、KKから紹介された内容の扱いは一般のPR会社と同じで、社団共同編集局が取材し、厳しく見極める。社団は一切対価を受け取っていない」と説明する[注26]。

しかし、ジャーナリストの原寿雄さん[注27](91)は怒った。原さんは、社団共同で編集主幹、KK共同では社長を歴任している。

「KKは(社団)共同の子会社だよ、親子関係。密接な。だから利害関係は同じ」

「(記事配信でカネが支払われるのは)反倫理を超えて犯罪的だよ、薬の問題は」

「それは(記事が)買収されているってことだよ。貧すれば鈍するで人の命まで売っちゃったら、そんなものジャーナリズムじゃないよ」[注28]

=つづく




志水満