医者と製薬会社の薬にまつわる「利益相反」不都合な事実
筆者の医療とも製薬業界ともかかわりのない方々にもなんとかわかりやすく伝えたい、という思いが切実に伝わってくる内容です。
引用紹介します。

MRIC by 医療ガバナンス学会より以下引用です
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本稿は2019年6月3日新潮社Foresight、6月6日JBpressに掲載された記事の転載です。
谷本哲也
2019年6月24日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  リンク
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私は、主に無床診療所と中規模の病院で勤務する内科医だ。延べ人数で年間1万人を超える患者を日常的に診察している。風邪やインフルエンザなどの感染性疾患、高血圧や糖尿病などの生活習慣病をあつかったり、救急搬送の対応やご高齢の方のお看取りに関わったりする機会が多い。
薬は内科医の仕事道具そのものだ。そのため、普段から社会と薬の関係について考え、診療活動から得られた知見を、専門誌に英語論文として発表する活動もよく行っている。
そのような経験を重ねているなかで、今回、一般向け書籍を執筆する機会をいただいた。それが、2019年4月に発売された小学館新書『知ってはいけない薬のカラクリ』だ。
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本書のテーマは、医者と製薬会社の薬にまつわる「利益相反」だ。ドラマで人気の「ドクターX」のような名医は登場せず、画期的な新薬開発のドラマを紹介するのでもない。一見地味で難解なテーマ設定と思われることだろう。
しかし、実は本稿をお読みの読者ご自身、さらには日本の医療体制そのものへの大きな実害を起こしかねない重要な問題なのだ。この点で、医療にかかわる様々な問題の中でもより大きな社会的意義を持つテーマの1つだと私は以前から考えてきた。
この問題を、医療とも製薬業界ともかかわりのない方々にもなんとかわかりやすく伝えたい、というのが拙著執筆のそもそもの動機だ。

●タブー視されてきた「医者とカネ」の問題
利益相反は、日常的にはあまりなじみがない言葉かもしれない。わかりやすくたとえるなら、「政治とカネ」の問題を思い浮かべていただくとよいだろう。
公共事業を請け負う業者を決める場合、その選定に影響力のある政治家が業者から接待を受けたり、献金を受けたり、あるいは多額の講演料の謝金を受け取っていたりしたら、公平性が疑われかねない。過去にも、田中金脈問題やリクルート事件など、政治とカネをめぐる社会的に大きな事件がたびたび繰り返されてきた。そのため、政治資金規正法が導入・改正され、政治献金の上限の設定、金額や資金の流れを公開することなどが定められ、今日にいたるのはご存じのとおりだ。
その「政治とカネ」と似たような図式が、医者と製薬会社の関係にも存在している。
しかし、政治と違って医療は「聖域」と考えられており、また、専門性も高く部外者が容易に口を挟むことができない。その結果、製薬会社との関係から必然的に生じる「医者とカネ」の問題について、表立って語ることはタブー視されてきた。
処方薬は、患者に向けて直接宣伝することはできない。そのため、製薬会社は患者には見えないところで、医者向けにさかんに薬の宣伝活動を行っている。タダで高級弁当を配ることから始まって、製薬会社がつくった宣伝用の資料文を読み上げるだけで5万円、10万円の講演料謝金をわたし、使い道に何の制限もない何百万円、何千万円ものお小遣いが奨学寄付金という名前で研究室に注ぎ込まれる。
非常勤の公務員として薬の発売や値段を決める政府の審議会委員や、病気の治療方針をしめす診療ガイドラインの作成委員も、当たり前のように多額の製薬マネーを受け取る。
このようにして、製薬会社から医者個人へわたる講師謝金等に費やされるお金は、日本製薬工業協会に加盟する各社総計で、1年間に実に264億円(2016年度)にも及んでいた。
続く





惻隠之心