ゴースト人類とデニソワ人が交配したのは、アフリカの外のはずだ。したがって、ゴースト人類も出アフリカをしなければならない。時代的には、第1回目と第2回目の出アフリカのあいだになる。つまり出アフリカは、少なくとも4回起こったことになる。ゴースト集団を仮定すると、出アフリカが1回増えてしまうのだ。

科学においては、仮説はシンプルなものが好まれる。もちろん、シンプルな仮説が必ず正しいというわけではない。でも、シンプルな仮説が正しい場合が多いので、よりシンプルな仮説があるなら検討しなければならない。
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今の場合、ゴースト集団を仮定しても、アフリカからの出入りを3回に抑えられる仮説がある。それは、ゴースト集団も4種の共通祖先も、最初に出アフリカをしたホモ・エレクトゥスの子孫だとする仮説である。

ただし、現生人類(ヒト)がアフリカで進化したことは、遺伝学と化石の証拠から、ほぼ確実だ。そこで、出アフリカをした4種の共通祖先の一部がアフリカに戻り、ヒトに進化したと考えればよい。その後、ヒトが出アフリカをしても、アフリカからの出入りは3回で済む。

この説が正しければ、ヒトの祖先はずっとアフリカに住んでいたのではなく、出アフリカしてユーラシアに住んでいたことになる。その後、ユーラシアからアフリカに戻った一部の人類が、ヒトの祖先になったというわけだ。

じつは、このような説は、以前からあったのだが、支持する人は少数だった。しかし、ゲノムデータは今のところ、この説に有利な結果を出している。まだ確定的ではないが、もしかしたら、進化の中心はずっとアフリカだったという常識は、修正されるかもしれない。

ほんの一部だけ、この本の内容を紹介したが、それでもゲノム分析のパワーを感じることができたのではないかと思う。化石による証拠がまったくないゴースト人類さえ、見つけることができるのだ。今までのような、DNAの一部による研究が子供の遊びに思えるほど、圧倒的な情報量をゲノムは持っている。

その分析結果は、人類の進化の表層を修正するだけではない。新たなゴースト人類を突きとめたり、出アフリカ説を修正したりするのは、人類進化の根幹に関わる研究成果である。
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匿名希望